日々繰り返している業務の中には、当たり前になりすぎて、ムダに気づけていない工程が潜んでいることがあります。この記事では、ChatGPTを使って業務フローを整理する方法を解説します。現在の手順を可視化するところから、重複作業、待ち時間、手作業が集中している工程を見つけ、改善ポイントに優先順位を付け、改善後のフローを確認するまでの流れを紹介します。
業務フロー全体を俯瞰して見直すことで、個別の作業を改善するだけでは気づけなかったムダを発見しやすくなります。
手順が抽象的にならないよう、この記事では一つのフローを最後まで追いかけます。題材は「新しく入った社員の受け入れ準備を整理する」です。内定通知を受け取ってから入社初日の受け入れが終わるまで、関わるのは4部署5名、1名あたり合計3時間15分かかっている、という想定で読み進めてください。
ChatGPTで業務フローを整理するための準備
フローの整理を始める前に、対象とする業務の範囲と、含めるべき情報を確認しておきます。
対象業務の開始と終了を決める
整理する業務がどこから始まり、どこで終わるのかを決めます。あいまいなまま始めると扱う情報が広がりすぎます。
題材の開始は内定通知の受領、終了は入社初日の受け入れ完了です。採用選考と、入社後の研修は範囲に入れません。ここを入れると関わる部署が倍になり、1回で整理しきれなくなります。
担当者・作業・使用ツールを書き出す
関わる担当者、行っている作業内容、使っているツールやシステムを書き出します。これらが揃えば、具体的な整理を依頼できます。
題材の担当は人事2名、情報システム1名、総務1名、受入部署の上司1名です。使うのは人事システム、アカウント申請フォーム、備品台帳、メールの4つです。
例外処理や承認工程も含めて整理する
通常の流れだけでなく、例外的に発生する処理や承認が必要な工程も書き出します。見落とすと実際の業務と異なるフローになり、改善の検討が的外れになります。
題材で忘れやすいのは、入社日が直前に変わる場合の差し戻しです。年に数回しか起きませんが、起きたときに手戻りが最も大きい工程です。
現在の業務手順をChatGPTで可視化する方法
準備した情報をもとに、現在の業務手順を可視化していきます。
担当と受け渡しを添えて渡すと、工程の切れ目が見えます。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
あなたは業務改善の経験がある担当者です。次の業務手順を工程として整理してください。
・各作業の担当者:人事2名、情報システム1名、総務1名、受入部署の上司1名
・使っているシステムや帳票:人事システム、アカウント申請フォーム、備品台帳、メール
・出力:工程ごとに「工程名/担当者/受け取るもの/渡すもの」を1行で書く
・条件:書かれていない工程を推測で補わないでください。担当者が変わる箇所に印を付けてください。【以下、作業の流れを発生順に記載してください】
※【 】の行は削除し、自分の情報に置き換えてから送信してください。
作業を発生順にChatGPTへ伝える
書き出した作業を、実際に発生する順番で伝えます。順番通りに伝えれば、後の分析の精度が上がります。
題材は7工程になります。工程の数より大事なのは、担当者が変わる箇所が4つあることです。受け渡しの回数が、後で見る待ち時間の発生箇所とほぼ一致します。
入力・処理・出力の流れに分ける
伝えた作業を、情報が入る工程、処理する工程、結果を出す工程に分けて整理させます。全体の流れを構造として把握できます。
担当者の受け渡しが分かる形にする
作業が担当者間でどう受け渡されているかが分かる形に整理させます。切り替わりが見えれば、待ち時間やボトルネックを見つけられます。
重複している作業を見つける方法
可視化した業務フローの中から、重複している作業を探します。
同じ情報を複数回入力する工程を探す
同じ情報を異なるシステムや書類に複数回入力している工程がないかを探させます。繰り返しは入力の一元化で改善できます。
題材で最も大きいのがここです。氏名・所属・入社日の3項目を、人事システム、アカウント申請フォーム、備品台帳の3か所に手で入力しています。1か所5分で15分、しかも3か所とも同じ情報なので、どこか1か所が間違うと突き合わせが必要になります。
同じ確認を別担当者が繰り返す工程を探す
同じ内容の確認を複数の担当者が行っている工程がないかを確認します。重複すると時間がかかり、確認漏れの責任もあいまいになります。
題材では、入社日の確認を人事と総務がそれぞれ行っています。備品の手配日を決めるための確認ですが、人事側の記録を見れば済みます。
待ち時間とボトルネックを見つける方法
業務フローの中で、時間がかかっている箇所を見つけます。
各工程の所要時間と待ちを渡すと、滞留箇所が特定できます。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
あなたは業務改善の経験がある担当者です。次の業務フローから、作業が滞る箇所を特定してください。
・工程と担当者:7工程、担当は人事・情報システム・総務・受入部署の上司
・各工程にかかる時間:合計3時間15分(最長は初日案内資料の作成45分)
・承認や返答を待つ箇所:アカウント発行の承認、備品発注の承認
・出力:「滞る箇所/滞る理由/全体にどれだけ影響するか」を1行ずつ書く
・条件:渡した情報で判断できない箇所は「情報不足」と書いてください。渡していない時間を推測しないでください。
承認や返答待ちで止まる箇所を探す
承認や他部署からの返答待ちで業務が止まっている箇所を探させます。承認フローの見直しや事前確認の仕組みで改善できます。
題材で止まるのはアカウント発行です。申請から発行まで平均2営業日かかり、作業時間は10分なのに、カレンダー上は2日進みます。作業時間と待ち時間は別に数えます。
前工程の遅れが後工程へ影響する箇所を探す
前の工程の遅れが後の工程に連鎖している箇所を確認します。全体の遅れに直結するため、優先的に見直します。
題材では、アカウントが発行されないと初日の案内資料にログイン情報を書けません。2営業日の遅れが、そのまま資料作成の着手日を押します。
作業が一人に集中する箇所を探す
特定の担当者に作業が集中している箇所がないかを確認します。不在のときに業務全体が滞るため、分担や仕組み化の対象になります。
題材では初日の案内資料を人事の1名だけが作っています。45分かかるうえ、過去の資料が本人の手元にしかありません。
手作業が集中している工程を見つける方法
手作業に頼っている工程は、AIや既存の機能で補助できる可能性がある領域です。
自動化方法を検討する段階では、生成AIとRPAの違いを比較|業務自動化で使い分ける判断基準を確認すると対象業務を分けやすくなります。
転記や定型入力が多い工程を探す
資料から資料へ情報を転記する作業や、決まった形式のデータを入力する作業が多い工程を探します。ミスが出やすく時間もかかるため、改善効果を見込めます。
毎回同じ文書を作る工程を探す
毎回似た内容の文書を一から作成している工程がないかを確認します。定型的な文書は、テンプレート化やAIの下書きで効率化できます。
題材の初日案内メールがこれです。毎回ゼロから書いて15分かかりますが、変わるのは氏名・所属・初日の集合時間・ログイン情報の4か所だけです。
AIや既存機能で補助できる作業を切り分ける
手作業が多い工程から、AIや既存の機能で補助できそうな作業を切り分けます。全部を自動化せず補助できる部分から見極めます。
改善ポイントに優先順位を付ける方法
見つかった改善候補が複数ある場合は、どこから着手するかを判断する必要があります。
題材で見つかったのは次の3つです。
| 見つかったムダ | 種類 | 短縮できる時間 |
|---|---|---|
| 初日案内メールを毎回ゼロから作る | 手作業 | 1名あたり10分 |
| 氏名・所属・入社日を3か所に手入力 | 重複入力 | 1名あたり10分 |
| アカウント発行が承認待ちで2営業日 | 待ち時間 | 作業時間は変わらず、日程が2日早まる |
見つけた課題を渡して、効果と手間の両面で並べさせます。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
あなたは業務改善の経験がある担当者です。次の改善候補に優先順位を付けてください。
・改善候補:初日案内メールのテンプレート化、3か所への重複入力の一元化、アカウント発行の事前申請化
・各候補で短縮できそうな時間:順に1名あたり10分、1名あたり10分、日程が2営業日早まる
・変更に関わる部署や承認:1つ目は人事のみ、2つ目は情報システムと総務、3つ目は情報システム
・出力:順位ごとに「改善候補/短縮できる時間/必要な調整/先にやるべき理由」を書く
・条件:他部署の承認が必要なものは分けて示してください。渡していない時間を足さないでください。
発生頻度と作業時間で効果を比べる
各候補について、発生頻度と作業時間をもとに効果を比較します。頻度が高く時間もかかる工程ほど、効果が大きく出ます。
題材の入社は月2〜3名です。1名あたり10分の短縮でも、年間で5〜6時間になります。頻度を掛けないと、10分の短縮は小さく見えます。
改善の難易度とリスクを確認する
効果とあわせて、実施の難易度や変更に伴うリスクも確認します。効果が大きくても難易度が高ければ、着手を後にする判断もあります。
題材で1位になるのは案内メールのテンプレート化です。短縮時間は重複入力と同じですが、人事だけで完結するので明日から始められます。
小さく試せる工程から着手順を決める
効果とリスクを踏まえ、小さく試せる工程から着手順を決めます。全体を一度に変えず一部から試せば、想定外の問題にも対応できます。
改善後の業務フローを作るときの確認ポイント
改善案をもとに新しいフローを作る際は、いくつかの点を確認しておく必要があります。
必要な承認やチェックを削っていないか確認する
効率化を優先するあまり、本来必要な承認やチェックまで削っていないかを確認します。ムダな重複を省くことと、必要な確認を省略することは違います。
ここが最も間違いの起きる場所です。題材では、アカウント発行の承認が2営業日かかるため、これを省く案が出てきます。ところがこの承認は、誰がいつどの権限を与えたかを残す記録でもあります。省くと、退職時に権限を回収する根拠がなくなります。待ち時間を短くするなら、承認そのものを消すのではなく、内定通知の時点で申請を出す形に前倒しします。
新しい手順が担当者に無理なく実行できるか確認する
改善後の手順が、担当者にとって無理なく実行できる内容かを確認します。図の上では効率的でも、実務では負担が大きい場合があります。
改善前後で効果を比較できる指標を決める
効果を後から確認できるよう、比較の指標を先に決めます。作業時間や処理件数など、改善前後で比べられるものにします。
題材の指標は2つです。1名あたりの合計作業時間と、内定通知から初日案内を送るまでの日数です。作業時間だけを見ると、待ち時間の改善が数字に出ません。
まとめ
ChatGPTで業務フローを整理するには、対象業務の範囲を決め、担当者・作業・ツールの情報を書き出したうえで、発生順にChatGPTへ伝えて可視化することが出発点になります。可視化したフローから、重複作業、待ち時間、手作業が集中する工程を見つけ、発生頻度と作業時間、改善の難易度とリスクを踏まえて着手順を決めます。改善後のフローを作る際は、必要な承認やチェックを削っていないか、担当者が無理なく実行できるかを確認し、効果を検証できる指標を決めたうえで運用を始めてください。AIによる業務改善の全体像は、AIで業務改善する方法で解説しています。
この記事で追いかけたフローは、7工程・4部署5名・1名あたり3時間15分から、案内メールのテンプレート化と重複入力の一元化で2時間55分になります。アカウント発行の承認は消さずに前倒しし、内定通知から初日案内までの日数を2営業日短縮します。
持ち帰れることは2つです。ひとつは作業時間と待ち時間を別に数えること。アカウント発行は作業10分・待ち2営業日で、混ぜると改善の対象を見誤ります。もうひとつは承認を待ち時間として消さないこと。権限を誰がいつ与えたかの記録が消えると、回収する根拠もなくなります。
よくある質問
Q. 業務フローが複雑で、どこから整理すればよいか分かりません。
まずは対象業務の範囲を小さく区切り、開始と終了が明確な一つの業務から可視化を始めると、取り組みやすくなります。題材の受け入れ準備は4部署で、これくらいが1回で整理できる上限です。
Q. 改善案を実施したあと、効果が出ているか分かりにくいです。
改善前の作業時間や処理件数などをあらかじめ記録しておき、改善後の数値と比較することで、効果を客観的に確認しやすくなります。