テキストを渡せばスライドが出てくるツールを使ってみたものの、出てきたものをそのまま提出する気にはなれない。見た目は整っているのに、読むと話の順序が合わず、根拠のない言い切りが混ざっている。この感覚は正しく、生成された資料はそのままでは社内で通りません。
この記事では、自動生成されたスライドを社内で通る資料へ直す手順を、構成・事実確認・表記・図表・最終確認の順に説明します。特定のツールに依存しない内容のため、どの生成ツールを使った場合でも同じ順序で進められます。
自動生成されたスライドをそのまま出せない理由
まず、どこが足りないのかを整理します。ここが分かっていないと、直す作業が見た目の調整だけで終わります。
構成が話の流れと合っていない
生成ツールは、渡したテキストの並び順を基準にスライドを組みます。したがって、渡した材料が時系列や思いついた順で並んでいれば、出てくる資料もその順序になります。
社内資料で求められるのは、多くの場合それとは別の順序です。結論を先に置き、その根拠を示し、実行の条件を述べるという流れになります。材料の順序と説明の順序は一致しないため、並べ替えが必ず必要になります。なお、生成ではなくテンプレートから資料を組む場合は構成を自分で決めることになり、この並べ替えの工程は発生しません。その進め方はMiriCanvasの使い方と料金で解説しています。
根拠のない断定が混ざる
生成された文章には、渡していない内容が断定の形で入ることがあります。「業界標準となっている」「多くの企業が導入している」といった表現が、根拠なく現れる形です。
これは文章として自然につながるように補われた結果であり、事実として確認されたものではありません。社内資料でこの種の記述を残すと、質疑の場で根拠を求められて答えられなくなります。生成物の確認の考え方は生成AIの回答が正しいか確認する方法で整理しています。
社内の表記や体裁に合っていない
社名や製品名の書き方、数字の単位、日付の形式は、社内で決まっていることが多くあります。生成された資料はこれらを知らないため、自社の他の資料と並べたときに浮きます。
読む側は、内容より先にこの不統一に気づきます。中身が正しくても、体裁がそろっていない資料は「急いで作ったもの」と受け取られます。
話の流れに合わせて構成を並べ替える
最初の作業は構成です。個別のページを直す前に、順序を決めてください。
結論を置く位置を決める
社内資料では、結論を先頭近くに置く形が基本になります。読む側は、何を判断すればよいかを知ってから背景を読みたいためです。
生成された資料は、背景から順に説明して最後に結論へ至る構成になっていることが多くなります。この場合、結論のページを2枚目か3枚目へ移し、残りをその根拠として並べ直します。
並べ替えはAIへ渡すこともできます。ページの見出し一覧を渡して、順序だけを組み替えさせる方法です。
あなたは社内の決裁資料を作る担当者です。以下はスライドの見出し一覧です。読む相手が最初に結論を把握し、その後に根拠と実行条件を読める順序へ並べ替えてください。出力は「新しい順番/見出し/その位置に置く理由」の3列の表とします。見出しの文言は変えず、新しい見出しを追加しないでください。
〇〇(見出し一覧を貼り付け)
背景と課題の順序を整える
結論の位置が決まったら、その前後を整えます。背景は、結論を理解するために必要な最小限に絞ってください。
生成された資料では、背景の説明が厚くなりがちです。読む側がすでに知っている前提まで説明されている場合、そのページは削れます。判断の基準は、そのページがなくても結論が理解できるかどうかです。
不要なスライドを削る
削る対象は3種類あります。読む相手がすでに知っている内容のページ、結論に貢献していないページ、そして他のページと内容が重複しているページです。判断に迷うページは、そのページを抜いた状態で話を通してみて、説明が成立するかで決めてください。
削ることに抵抗があるかもしれませんが、枚数が多い資料は最後まで読まれません。10分で説明する資料であれば10枚前後が上限です。それを超える分は、口頭で補うか、補足資料として別に分けてください。
記載内容の裏を取る
構成が決まったら、書かれている内容を確認します。この工程を省くと、質疑で答えられません。
数値と出典を元資料と照合する
資料に入っている数値を、元にした資料と1つずつ照らします。生成の過程で桁が変わる、単位が落ちる、概数に丸められるといった変化が起きることがあります。
確認するのは、金額、比率、期間、件数の4つです。この4つは判断に直結するため、誤りがそのまま意思決定に影響します。元の資料が手元にない数値は、その場で削るか、出典を確認できるまで空欄にしてください。
事実と推測を分けて書き直す
次に、書かれている内容を事実と推測に分けます。自分が渡した材料に根拠があるものが事実、それ以外は推測です。
この仕分けもAIへ渡せますが、判断の基準を明示する必要があります。
あなたは社内資料の内容を確認する担当者です。以下の「元にした資料」と「スライドの文言」を照らし合わせ、スライドの各文を「元資料に記載あり」「元資料から読み取れるが記載はない」「元資料にない」の3つに分類してください。出力は「スライドの文/分類/該当する元資料の記述」の3列の表とします。判断できない場合は「元資料にない」に入れてください。
〇〇(元にした資料とスライドの文言を貼り付け)
「元資料にない」に分類された文は、削るか、根拠を集めてから書き直します。
断定できない表現を修正する
推測にあたる内容を残す場合は、推測であることが分かる書き方にします。「〜と考えられる」「〜の可能性がある」といった形です。
ただし、この形の文が資料に多く並ぶと、提案として弱くなります。推測が3つ以上並ぶようであれば、根拠を集めて事実に変えるか、その論点自体を落とすかを判断してください。
社内の表記ルールへ合わせる
内容が固まったら、体裁をそろえます。作業としては単純ですが、抜けると目立ちます。
用語と製品名の表記を統一する
社名、製品名、部署名、サービス名の表記をそろえます。正式名称と略称が混在していないか、英字の大文字と小文字が一致しているかを見てください。
社内で使う略語も同様です。初出で正式名称を書き、以降は略称を使う形が一般的ですが、社内の慣習がある場合はそれに従います。
数値の単位と桁の書き方を揃える
数字の書き方は、資料の中で統一します。万単位と千単位が混ざる、桁区切りのカンマが一部だけ入っている、小数点の桁数がページごとに違うといった状態は、読む側に不信感を与えます。
比率を扱う場合は、小数点以下の桁数を決めてください。ある場所で「12.5%」、別の場所で「13%」と書かれていると、同じ数字を指しているのか判断できません。
日付と敬称の扱いを揃える
日付の形式は、和暦と西暦のどちらを使うか、区切りを何にするかを決めます。社内文書では西暦とスラッシュ区切りが多く使われますが、提出先によって指定がある場合はそれに従ってください。
人名を載せる場合は、敬称の有無をそろえます。社内の資料で自社の人名に敬称を付けるかどうかは慣習によるため、既存の資料に合わせるのが確実です。
図表と余白を読みやすく調整する
ここからは見た目の工程です。生成された資料は、1枚の情報量が多い傾向があります。
1枚に載せる情報量を減らす
1枚のスライドに載せる論点は1つにしてください。生成された資料では、1枚に複数の論点が詰め込まれていることがよくあります。
減らす作業は、機械的に進められます。
あなたは社内の説明資料を整える担当者です。以下のスライド1枚ぶんの文言を、要点3つ以内に絞ってください。削った内容のうち、口頭で補足すべきものは「口頭で補う項目」として別に書き出してください。残す3つは各30字以内とし、元の文言にない内容を加えないでください。
〇〇(スライド1枚ぶんの文言を貼り付け)
口頭で補う項目は、発表のメモとして手元に残します。資料から消すのではなく、置き場所を変えるという整理です。
図の位置と大きさを揃える
複数のページに図を置く場合は、位置と大きさをそろえます。ページごとに図の位置が違うと、めくるたびに視線が動いて読みにくくなります。
図は1枚につき1つが目安です。2つを並べて比較させたい場合でも、それぞれの意味が伝わるかを確認してください。判断に迷うなら、ページを分けたほうが伝わります。
投影と印刷の両方で確認する
仕上がったら、実際に使う形で確認します。投影するなら会議室で映し、配布するなら印刷して見てください。
画面では読めても、投影すると小さすぎる文字があります。基準は、いちばん後ろの席から読めるかどうかです。紙で配る場合は、濃い背景に白抜きの文字を置いた箇所が刷り上がりで読めるかを見てください。生成ツール側で編集を続ける場合は、イルシルのように編集画面で文言と配置を調整できるものを選ぶと、書き出し後の手戻りが減ります。
配布前の最終確認
最後の工程です。ここまでの作業で直し漏れがないかを確認します。
誤字と社外秘情報の混入を確認する
誤字は、通して読むより見出しだけを拾い読みするほうが見つかります。見出しの誤字はいちばん目立つ場所にあるためです。
あわせて確認するのが、社外秘の情報が混ざっていないかです。元にした資料から数値や表現を引いてきた場合、そのまま出せない内容が入っていることがあります。社外へ出す資料では、この確認を必ず入れてください。
| 確認項目 | 見る箇所 | 直し方 |
|---|---|---|
| 数値の誤り | 金額・比率・期間・件数 | 元資料と照合する |
| 根拠のない断定 | 言い切りの文末 | 削るか出典を付ける |
| 社外秘の混入 | 引用した数値と固有名詞 | 伏せるか削除する |
リンクと参照先が正しいか確認する
資料に社内の文書や外部のページへの参照を入れている場合は、実際に開いて確認します。移動や削除で開けなくなっていることがあります。
参照先を示すときは、文書名と該当箇所まで書いてください。文書名だけでは、受け取った側が探すことになります。
ファイル形式と権限を決める
配布の形式を決めます。閲覧だけでよいのか、編集して使ってもらうのかで選ぶ形式が変わります。
共有リンクで渡す場合は、開ける相手の範囲を確認してください。社外の相手へ渡す資料は、閲覧の範囲を限定するか、ファイルとして書き出して送るほうが管理できます。資料に限らず、生成AIが作ったものを社内外へ出す前に見るべき項目は生成AIの成果物を仕事で使う前のチェック項目にまとめています。
よくある質問
Q. 直す時間を考えると、最初から自分で作ったほうが早くないですか? A. 白紙から作る場合と比べて短くなるのは、体裁を整える時間です。構成の判断と事実確認はどちらの作り方でも必要になるため、この2つを残す前提で使うと効果が出ます。
Q. 生成した資料をそのまま使ってよい場面はありますか? A. 社内の勉強会の説明や、たたき台として議論するための資料であれば、細部を詰めずに使う判断もあります。判断の基準は、その資料をもとに誰かが意思決定するかどうかです。
Q. 出来上がった資料をレビューしてもらう前に何をすべきですか? A. 構成の並べ替えと事実確認までは自分で済ませてください。体裁だけ整った状態でレビューに出すと、指摘が細部に集中して構成の問題が見過ごされます。レビューの観点はChatGPTでプレゼン資料をレビューする方法で整理しています。
まとめ
自動生成されたスライドを社内資料に仕上げる手順は、構成を結論起点に並べ替え、数値と記述の裏を取り、表記を社内のルールへそろえ、1枚の情報量を減らし、配布前に誤字と社外秘の混入を確認する、という順序です。
この順序には理由があります。構成を決める前に個別のページを直すと、後で削るページに時間をかけることになるためです。体裁の調整は最後に回してください。
生成ツールが肩代わりするのは体裁を整える工程であり、何を伝えるかと、それが事実かどうかの判断は残ります。資料作成全体の進め方はAIで業務文書・社内資料を作る方法で整理しています。