顧客向けの提案書を作ろうとしても、自社が伝えたいことばかりが先に立ってしまい、顧客の課題との結びつきが弱い提案書になってしまう、という経験はないでしょうか。顧客の課題を整理しないまま提案内容を組み立ててしまうと、顧客にとって的外れな提案になり、判断材料が不足したまま検討が止まってしまう恐れがあります。
この記事では、顧客向け提案書を作る前に整理しておきたい顧客情報から、ChatGPTでの顧客課題の構造化、課題に対応する提案内容の組み立て方、提案による効果の整理、実施方法とスケジュールの整理、費用と提案条件の示し方、顧客が判断しやすい構成への整え方、そして提出前の確認方法までを順番に解説します。読み終える頃には、顧客の判断材料が不足しない提案書の構成と初稿を作れる状態になります。
手順が抽象的にならないよう、この記事では一つの提案書を最後まで組み立てます。題材は「従業員40名の印刷会社から「受注の進捗が見えない」と相談を受け、工程管理の仕組みを提案する」です。顧客の要望は「管理システムを入れたい」で、背景には進捗確認の電話が1日20件あるという状況がある、という想定で読み進めてください。
顧客向け提案書を作る前に顧客情報を整理する
ChatGPTに依頼する前に、提案の前提となる顧客情報を整理しておきます。
顧客の事業内容と状況を確認する
提案先の顧客がどのような事業を行い、現在どのような状況にあるかを確認します。顧客の状況を理解しないまま提案を組み立てると、実情に合わない内容になってしまいます。
題材の顧客は従業員40名の印刷会社で、受注から納品までが4工程に分かれています。工程間の引き継ぎが口頭と紙で行われていて、どこまで進んだかを知るには担当者に聞くしかありません。
提案に至った経緯を整理する
この提案を行うことになった経緯を整理します。経緯が整理されていないと、提案書の中で提案理由を一貫して説明できません。
提案書を読む相手の立場を確認する
提案書を実際に読む相手が、どのような立場や役割の人かを確認します。読む相手の立場によって、重視すべき情報や説明の仕方が変わってきます。
題材では、相談してきたのが製造部長で、決裁するのは社長です。部長は現場の手間を、社長は費用の回収期間を見ます。両方が判断できる材料を入れます。
ChatGPTで顧客の課題を構造化する方法
顧客情報が整理できたら、ChatGPTを使って顧客の課題を構造化します。
ヒアリング内容を渡すと、表層の要望と根本の課題が分かれます。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
あなたは顧客提案の経験がある担当者です。次のヒアリング内容から顧客の課題を構造化してください。
・ヒアリングで聞いた内容:進捗確認の電話が1日20件、工程の引き継ぎは口頭と紙、納期の遅れが月2件
・顧客の業種と規模:印刷業、従業員40名、受注から納品まで4工程
・顧客が言っていた要望:管理システムを入れたい
・出力:「顧客が言った要望/その背景にありそうな課題/確認が必要なこと」を1行ずつ書く
・条件:ヒアリングにない情報は推測で補わず、確認事項として挙げてください。
顧客から聞いた内容をそのまま整理する
顧客から聞いた内容を、解釈を加えずそのまま整理します。早い段階で自社都合の解釈を加えてしまうと、顧客の本来の課題からずれてしまいます。
表面的な課題と根本的な原因を分ける
顧客が語った表面的な課題と、その背景にある根本的な原因を分けて整理します。表面的な課題だけに対応する提案では、根本的な解決につながりません。
ここが最も間違いの起きる場所です。題材の要望は「管理システムを入れたい」ですが、これをそのまま提案にすると、システムが入っても電話は減りません。入力する人が決まっていないからです。要望は手段で、課題は「進捗が入力されていないこと」です。要望をそのまま受けた提案書は、導入後に「思っていたものと違う」と言われます。
課題の優先順位を確認する
顧客にとって、複数の課題のうちどれが最も優先度が高いかを確認します。優先順位を把握しないまま提案を組み立てると、顧客が本当に解決したい課題に焦点が当たりません。
題材で挙がる課題は、進捗の可視化と原価の把握の2つです。優先するのは前者で、電話の件数という形で困りごとが数えられているためです。
課題に対応する提案内容を組み立てる方法
課題が構造化できたら、それに対応する提案内容を組み立てます。
課題と提供できることを対応させると、根拠のある提案になります。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
あなたは顧客提案の経験がある担当者です。次の課題に対する提案内容を組み立ててください。
・整理した顧客の課題:工程の進捗が記録されていない、記録する担当と手順が決まっていない
・自社が提供できること:工程の入力と閲覧の仕組み、入力ルールの設計支援、現場への教育
・提供できないこと:デザイン工程の自動化、既存の受注システムの改修
・出力:課題ごとに「対応する提案/その提案で解決する範囲/解決しない範囲」を書く
・条件:提供できないことを提案に含めないでください。渡していない機能を追加しないでください。
課題と提案の対応は、次の形になります。
| 顧客の課題 | 対応する提案 | 解決しない範囲 |
|---|---|---|
| 工程の進捗が記録されていない | 工程の入力と閲覧の仕組み | 入力されなければ可視化されない |
| 記録する担当と手順が決まっていない | 入力ルールの設計支援と現場教育 | 運用の定着は顧客側の管理に依存 |
| 原価が把握できていない | 今回の提案に含めない | 第2段階として別途提案 |
課題と提案内容を一対一で対応させる
整理した課題それぞれに対して、対応する提案内容を一対一で結びつけます。対応関係が曖昧なままでは、顧客はこの提案が自社の悩みを解決するものだと納得しにくくなります。
自社の強みが活きる部分を明確にする
提案内容の中で、自社の強みが特に活きる部分を明確にします。強みが伝わらない提案は、他社の提案と比較された際に選ばれにくくなります。
題材で効くのは入力ルールの設計支援です。仕組みだけを売る提案と並んだとき、入力が続く形まで設計することが差になります。
実現できないことも正直に示す
提案内容の中で、対応できない部分があれば正直に示します。都合の良い部分だけを強調してしまうと、後から実現できないことが分かった際に信頼を損ないます。
題材で明記するのは、デザイン工程の自動化と既存システムの改修を含まないことです。原価の把握も今回は範囲外として、第2段階に置きます。
提案によって得られる効果を整理する方法
提案内容が組み立てられたら、それによって得られる効果を整理します。
顧客側の数値を渡すと、効果の書き方が具体になります。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
あなたは顧客提案の経験がある担当者です。次の提案の効果を整理してください。
・提案内容:工程の入力と閲覧の仕組み、入力ルールの設計支援、現場教育
・顧客の現状の数値:進捗確認の電話が1日20件、1件3分、納期の遅れが月2件
・効果の根拠になる情報:電話の内容のうち進捗確認が8割
・出力:「効果/その根拠/前提となる条件」を1行ずつ書く
・条件:根拠のない数値や他社事例の断定は書かないでください。渡した数値から計算できない効果は「要確認」と書いてください。
顧客の課題がどう解決されるかを示す
提案を実施することで、顧客の課題がどのように解決されるのかを示します。効果だけを述べて課題との結びつきが見えないと、顧客は提案の価値を実感できません。
数値で示せる効果を整理する
数値で表すことができる効果を整理します。定性的な説明だけでは、投資に見合う効果かどうかを顧客が判断しにくくなります。
題材では、1日20件の電話のうち進捗確認が8割なので16件です。1件3分で1日48分、月20営業日で16時間になります。この16時間が、顧客の判断材料になる唯一の数字です。
効果が現れるまでの見通しを示す
効果が実際に現れるまでの見通しを示します。見通しがないまま効果だけを伝えると、顧客は実施後にいつまで待てばよいのか分からなくなります。
題材では、入力が定着するまでを2か月と置きます。それまでは電話が残る前提で書きます。
実施方法・スケジュール・体制を整理する方法
効果が整理できたら、実施方法やスケジュール、体制を整理します。
実施の進め方を段階ごとに示す
提案内容をどのように進めていくのか、段階ごとに示します。進め方が示されないと、顧客は実施後の流れをイメージできません。
題材は3段階です。入力ルールの設計に1か月、1工程だけで試すのに1か月、全4工程へ広げるのに2か月で、合計4か月です。
各段階にかかる期間を明示する
それぞれの段階にどの程度の期間がかかるのかを明示します。見通しが不明確なままでは、顧客は導入計画を立てにくくなります。
双方の役割分担を明確にする
実施にあたって、自社と顧客それぞれが担う役割を明確にします。役割分担が曖昧なままでは、実施段階になって認識のずれが生じます。
題材で顧客側に残るのは、入力ルールの決定と、現場へ入力を求める判断です。ここを自社が代わりに決める書き方にすると、定着しません。
費用と提案条件を分かりやすく示す方法
体制まで整理できたら、費用と提案条件を分かりやすく示します。
費用の内訳を項目ごとに示す
必要な費用を、項目ごとに分けて示します。総額だけを提示するよりも、内訳が分かる方が顧客は納得して検討しやすくなります。
題材の内訳は、初期設定、月額の利用料、現場教育の3項目です。社長が見るのは回収期間なので、月額と削減できる16時間を並べて書きます。
前提条件や適用範囲を明記する
見積もりの前提となる条件や、提案内容が適用される範囲を明記します。前提が示されないと、後から想定外の追加費用が発生し、顧客との認識にずれが生じます。
支払い条件や契約期間を確認できるようにする
支払いの条件や契約期間についても、顧客が確認できる形で示します。契約に関わる条件が不明確なままでは、顧客が安心して検討を進められません。
顧客が判断しやすい提案書の構成へ整える方法
費用まで整理できたら、顧客が判断しやすい構成へ整えます。
結論となる提案内容を冒頭で示す
何を提案しているのかという結論を、提案書の冒頭で示します。詳細な説明から始めてしまうと、顧客が全体像をつかむまでに時間がかかります。
題材の冒頭に置くのは「進捗確認の電話を月16時間減らすために、工程の入力と閲覧の仕組みを4か月で導入する」の一文です。
顧客の課題から提案までの流れを一貫させる
顧客の課題から提案内容、効果までの流れを一貫させて構成します。話の流れが行き来してしまうと、顧客が提案の筋道を追いにくくなります。
判断に必要な情報の抜け漏れを確認する
顧客が検討する上で必要な情報に、抜け漏れがないかを確認します。判断材料が不足したままでは、顧客は検討を進められず保留にしてしまいます。
ChatGPTで作った提案書を顧客へ出す前に確認する方法
構成が整ったら、最後に顧客へ出す前の確認を行います。
提案内容への質問を事前に準備するには、ChatGPTで想定質問と回答を作る方法|提案・説明資料の質疑対策も参考になります。
顧客の状況と矛盾する記載がないか確認する
提案書の内容が、事前に確認した顧客の状況と矛盾していないかを確認します。矛盾した記載があると、顧客の状況を理解していないという印象を与えてしまいます。
数値や固有名詞の誤りを確認する
記載した数値や固有名詞に誤りがないかを確認します。細かな誤りであっても、提案書全体の信頼性を損なう原因になります。
ChatGPTが補完した内容の事実確認をする
ChatGPTが整理の過程で補完した内容について、事実確認を行います。もっともらしく書かれていても、裏付けの取れていない内容をそのまま顧客へ提示しないことが大切です。自社の製品資料を先に読み込ませ、資料に書かれた範囲で文章を作らせる方法はトランスコープの使い方で解説しています。
題材で紛れ込むのは「同業では工数が3割削減された事例があります」という一文です。渡していない数値で、出どころを問われても答えられません。顧客に出す提案書では、この種の一文が最も信頼を損ないます。
まとめ
ChatGPTで顧客向け提案書を作る際は、顧客情報を整理したうえで、顧客の課題を構造化することが大切です。課題に対応する提案内容を組み立て、効果や実施方法、費用を整理し、顧客が判断しやすい構成へ整えたうえで提出前に確認することで、顧客の判断材料が不足しない提案書に仕上げられます。
この記事で追いかけた提案書は、課題2件・提案2件・範囲外3件の形にまとまります。効果は進捗確認の電話が月16時間減ることで、実施は3段階4か月です。原価の把握は今回の範囲から外し、第2段階の提案に回します。
持ち帰れることは2つです。ひとつは顧客の要望をそのまま提案にしないこと。「管理システムを入れたい」は手段で、課題は進捗が入力されていないことです。もうひとつは顧客側に残る役割を書くこと。入力ルールの決定を自社が代わりに決める書き方にすると、導入しても定着しません。
まずは提案先の顧客がどのような事業を行い、現在どのような状況にあるかを確認するところから始めてみてください。業務文書づくり全体の流れは、AIで業務文書・社内資料を作る方法で解説しています。