Excel業務にAIツールを取り入れたいと思っても、関数作成が得意なものや分析が得意なものなど種類が多く、どれを選べばよいのか迷ってしまう、という経験はないでしょうか。困っている作業を整理せずに比較を始めると、機能は豊富でも実際の業務に合わないツールを選んでしまう恐れがあります。
この記事では、Excel向けAIツールを選ぶ前に整理しておきたい業務内容から、関数・数式支援、データ分析機能、表・グラフ作成支援、Microsoft Officeとの連携、ファイルの扱いとセキュリティ、料金と利用頻度を比較する観点、そして自分に合うツールを選ぶ手順までを順番に解説します。読み終える頃には、自分のExcel業務に合ったツールを選べる状態になります。
Excel向けのAIツールは、大きく次の3つの型に分かれます。
| 型 | 代表例 | 得意なこと |
|---|---|---|
| Excelの中で使う型 | Microsoft 365 Copilot | シートを開いたまま指示でき、集計や数式をその場に挿入できる |
| 外部のAIチャットを使う型 | ChatGPT、Claude | 数式やVBAの作成、エラー原因の説明に強い |
| Excelの標準機能を使う型 | [ホーム]タブの[データの分析] | 範囲を選ぶだけで表の傾向やグラフ候補が出る |
Excel向けAIツールを選ぶ前に業務を整理する
ツールを比較する前に、Excelでどのような作業に困っているかを整理しておきます。
関数作成・分析など困っている作業を特定する
関数の作成に困っているのか、データ分析に困っているのかなど、具体的な作業を特定します。そこが明確であれば、比較すべき機能を絞り込みやすくなります。
優先して見るべき型の対応は次のとおりです。
| 困っている作業 | 優先して見る型 | 理由 |
|---|---|---|
| 数式が書けない、エラーが直せない | 外部のAIチャット | 無料でも試せ、数式の理由まで返る |
| 毎回同じ集計をやり直している | Excelの中で使う型 | シートを開いたまま指示でき、貼り付けが不要 |
| 何を集計すべきか分からない | 標準機能または外部のAIチャット | 切り口の候補を先に並べられる |
| VBAで自動化したい | 外部のAIチャット | コードの生成と修正のやり取りに向く |
Excel内で使いたいか外部AIでもよいか決める
Excelの中で直接使いたいのか、外部のAIサービスを使ってもよいのかを決めます。この違いによって、比較対象となるツールの種類が大きく変わってきます。
分かれ目は扱うデータの量です。数十行の表ならコピーして外部のAIチャットに貼るほうが早く、数千行を毎月同じ形で集計しているなら、シートを開いたまま指示できる型が有利です。
扱うデータの機密性を確認する
Excelで扱っているデータの機密性を確認します。社外秘の情報を含む場合は、外部サービスへ渡してよいかどうかを事前に判断しておく必要があります。
数式やVBAを作る目的なら、実際の値を渡す必要はありません。「A列が日付、B列が取引先、C列が金額」という列の構成だけで数式は作れます。値を渡さない前提にすれば、選べるツールの幅が広がります。
Excel関数・数式支援を比較するポイント
業務内容が整理できたら、まず関数・数式の支援機能を比較します。
自然な言葉から数式を提案できるか確認する
やりたいことを自然な言葉で伝えるだけで、適した数式を提案できるかを確認します。関数名を覚えていなくても、目的を伝えれば候補を示してもらえるかは使いやすさに直結します。
比較は、全ツールに同じ依頼を投げて結果を並べる方法が確実です。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
Excelの数式を作ってください。
・データ:1行目が見出し、A列が受注日、B列が取引先、C列が金額、データはA2からC500
・やりたいこと:C列の金額のうち、B列が「A社」で、かつA列が今月の行だけを合計する
・条件:数式だけを1行で返し、使った関数の役割を1文ずつ補足してください。
=SUMIFS($C$2:$C$500,$B$2:$B$500,"A社",$A$2:$A$500,">="&EOMONTH(TODAY(),-1)+1,$A$2:$A$500,"<="&EOMONTH(TODAY(),0)) のような形が返ってくれば、複数条件と日付範囲の両方を扱えていると判断できます。
長い数式の意味やエラーを説明できるか見る
既に入っている長い数式の意味や、発生しているエラーの原因を説明できるかを見ます。他人が作った複雑な数式を引き継いだ場合に役立つ機能です。
確かめ方は、手元の一番長い数式を貼り、「処理の順番に分解して説明してください」と頼む方法です。エラーの切り分け能力は、次の依頼を各ツールに投げると差が出ます。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
次の数式でエラーが出ます。原因と修正後の数式を教えてください。
・入力した数式:=VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:C,3,FALSE)
・エラー表示:#N/A(500行のうち一部の行だけ)
・期待する結果:A2の商品コードに対応する単価を返す
・条件:エラーを隠さず、原因を特定したうえで修正してください。
原因を特定せずIFERRORで包むだけの回答を返すツールは、引き継ぎ用途に向きません。
Excelのバージョンに合う関数を提案できるか確認する
利用しているExcelのバージョンで使える関数を、正しく提案できるかを確認します。新しいバージョン限定の関数を提案されても、自分の環境では使えない場合があります。
確かめ方は、「Office 2019で動く形で書いてください」と条件を付けて依頼する方法です。XLOOKUPは古いバージョンで使えないため、VLOOKUPやINDEXとMATCHの組み合わせに置き換えてくるかを見ます。
データ分析機能を比較するポイント
関数支援が確認できたら、データ分析の機能を比較します。
データの傾向を質問形式で分析できるか見る
データ全体の傾向について、質問するだけで分析結果を得られるかを見ます。自分で集計方法を考えなくても、概要を把握できるかは分析の入り口として重要です。
Excel標準の機能にも同じ性質のものがあります。表の範囲を選んで[ホーム]タブの[データの分析]を開くと、傾向やグラフの候補が並びます(表示位置はバージョンにより異なります)。追加費用なしで試せるため、有料ツールを比べる前の基準になります。
比べるときは、どのツールにも同じ依頼文を渡します。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
手元のExcelデータの傾向を知りたいです。列構成だけを渡すので、このデータから確認できることを整理してください。条件は3点です。(1)集計軸の候補を5つ挙げ、それぞれ何が分かるかを1行で書く、(2)このデータだけでは判断できないことを分けて書く、(3)実際の値は渡していないので、数値の推測はしないでください。
【列構成】A列=受注日、B列=取引先、C列=商品カテゴリ、D列=金額、E列=担当者(データはA2からE500)
集計や比較の切り口を提案できるか確認する
どのような切り口で集計・比較すればよいかを、提案してもらえるかを確認します。自分では思いつかなかった視点が得られると、分析の幅を広げやすくなります。
分析結果の根拠となる数値を確認しやすいか見る
示された分析結果について、根拠となる数値を確認しやすいかを見ます。結論だけを提示されるより、裏付けとなる数値まで追える方が安心して活用できます。 Excelで整えた表やグラフをスライドへ起こす作業まで含めて効率化したい場合は、AIプレゼン資料作成ツールの選び方が参考になります。
表・グラフ作成支援を比較するポイント
データ分析機能が確認できたら、表やグラフの作成支援を比較します。
表の作成や整形を支援できるか確認する
雑然としたデータを、見やすい表へ整形する作業を支援できるかを確認します。手作業での整形に時間がかかっている場合、この機能が効果を発揮しやすくなります。
整形を任せる前に、見出しを1行にする・セルの結合を外す・1列に1種類の情報だけを入れるの3点を整えます。結合セルが残ると、どのツールでも列の対応を誤ります。
データに合うグラフを提案できるか見る
扱っているデータの性質に応じて、適したグラフの種類を提案できるかを見ます。データに合わないグラフを選んでしまうと、伝えたい内容が正しく伝わらなくなってしまいます。
基準は決まっているため、提案が外れていないかを見れば足ります。比較は棒グラフ、推移は折れ線グラフ、構成比は円グラフです。項目が10件あるのに円グラフを提案してくるなら採用しません。
判定には同じ依頼文を使います。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
Excelでグラフを作ります。伝えたい結論と列構成を渡すので、適したグラフの種類を選んでください。条件は3点です。(1)候補を2つまでに絞り、それぞれの向き不向きを1行で書く、(2)項目数が多くて読み取りにくくなる場合は、まとめ方を提案する、(3)この結論がデータで裏付けられない場合は「このデータでは示せない」と書く。
【結論】取引先12社のうち上位3社で売上の半分を占めている
【列構成】A列=取引先、B列=年間売上(12行)
作成後にExcel上で修正しやすいか確認する
作成された表やグラフを、Excel上で後から修正しやすいかを確認します。提案された結果をそのまま使うのではなく、微調整できる自由度も比較材料になります。
確認するのは、出てきたものが編集できるExcelの要素かどうかです。数式やグラフとして挿入されれば後から直せますが、画像や文章の説明にとどまる場合は自分で作り直すことになります。
Microsoft Officeとの連携を比較するポイント
表・グラフの支援が確認できたら、他のOffice製品との連携を比較します。
Excel内から直接AIを使えるか確認する
Excelの画面を離れることなく、AI機能を直接呼び出せるかを確認します。別のアプリケーションを行き来する手間が省けるかは、日々の作業効率に影響します。
Microsoft 365 Copilotの場合、Excelの画面右下にあるCopilotのアイコンから呼び出します。ファイルは最新の形式(.xlsx)で保存しておく必要があり、Strict Open XMLスプレッドシートなどはサポート対象外とされています(2026年9月時点の公開情報)。
Word・PowerPointなど他のOffice製品と連携できるか見る
WordやPowerPointなど、他のOffice製品ともあわせて連携できるかを見ます。Excelでの分析結果を資料へ展開する場面が多い場合、この連携が役立ちます。
既存のMicrosoft 365環境で利用できるか確認する
すでに契約しているMicrosoft 365の環境で、そのまま利用できるかを確認します。新たに別の契約や環境構築が必要かどうかは、導入のしやすさを左右します。
Microsoft 365 CopilotはMicrosoft 365のプランに追加するアドオンのため、Microsoft 365の契約がある前提で追加費用がかかります。
ファイルの扱いとセキュリティを比較するポイント
Office連携が確認できたら、ファイルの扱いとセキュリティを比較します。
Excelファイルを直接読み込ませる必要があるか確認する
分析のために、Excelファイルそのものをアップロードする必要があるかを確認します。ファイルごと渡す場合と、一部のデータだけを渡す場合とでは、扱うべき注意点が異なります。
ファイルごと渡すと、非表示のシートや古いデータまで一緒に渡ります。必要な範囲だけを新しいファイルにコピーしてから渡せば、渡す情報を自分で管理できます。
入力データの保存・学習利用条件を見る
入力したデータが、どのように保存され、AIの学習に利用されるのかを見ます。機密性の高いデータを扱う場合は、この条件を事前に確認しておくことが欠かせません。
社内データを扱えるサービスか判断する
社内のルールに照らして、そのサービスへ業務データを扱わせてよいかを判断します。便利さだけで判断せず、社内のセキュリティ基準との適合を確認することが大切です。
料金と利用頻度を比較するポイント
セキュリティが確認できたら、料金と利用頻度の関係を比較します。
無料版の機能と利用上限を確認する
無料版で使える機能の範囲と、利用回数などの上限を確認します。日常的な利用に対して無料版で足りるかどうかを、あらかじめ見積もっておくことが大切です。
外部のAIチャットは無料プランがあり、数式やVBAの作成なら無料の範囲でも試せます。Excel標準の[データの分析]も、Microsoft 365を契約していれば追加費用なしで使えます。まずはこの2つで足りるかを確かめてから有料の検討に進みます。
有料版で追加される機能を整理する
有料版に切り替えることで、どのような機能が追加されるのかを整理します。それが自分の業務に本当に必要かどうかを見極める必要があります。
2026年9月時点では、外部のAIチャットの個人向け有料プランは月額3,000円前後が中心です。Microsoft 365 CopilotはMicrosoft 365への追加アドオンで、1ユーザーあたり月額3,148円(年間契約)、月払いは3,778円とされています。2026年7月から12月は2,698円の割引価格が案内されています。金額は変わるため、契約前に公式ページで確認してください。
削減できる作業時間と料金を比較する
そのツールによって削減できる作業時間と、かかる料金を比較します。時間の削減効果が料金に見合っているかどうかが、導入判断の重要な材料になります。 会議の記録側を効率化したい場合は、AI議事録ツールの選び方で文字起こしと要約の条件を比較しています。
見積もりは、対象の作業にかかっている時間を1か月分に換算し、減る割合を控えめに置きます。月4時間の集計の半分が減るなら月2時間の削減で、これと月3,000円前後という費用を並べて判断します。
自分に合うExcel向けAIツールを選ぶ手順
各観点を比較できたら、最後に自分に合うツールを選ぶ手順を確認します。
必須機能と利用環境から候補を絞る
自分にとって欠かせない機能と、利用できる環境を基準に候補を絞ります。すべての機能を求めるのではなく、優先度の高い条件から絞り込むことが選びやすさにつながります。
絞り込みの順番は、社内ルールで使えるか、必要な機能があるか、最後に料金です。逆にすると、決めたあとで社内ルールに合わず比較をやり直します。
同じExcel作業で複数ツールを試す
同じExcel作業を題材に、複数のツールを実際に試してみます。同条件で比較することで、それぞれの得意・不得意が見えやすくなります。
題材は、複数条件の集計・エラーが出ている数式・繰り返し作業のVBA化の3つを用意します。前の章の依頼文をそのまま使い回せば同条件になります。
3本目のVBA化の題材には、次の依頼文を使います。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
Excelのマクロを作ってください。
・使用環境:Microsoft 365版のExcel(Windows)
・やりたいこと:同じフォルダ内にある3つのブックのSheet1のA列からD列を、集計用ブックの最終行の下へ順に貼り付ける
・前提:どのブックも1行目が見出しで、見出しは2回目以降は貼り付けない
・条件:コードを提示したうえで、貼り付け先を書き換える前に対象の件数だけを表示して確認できる形も一緒に示してください。
正確性・操作性・安全性・費用で選ぶ
結果の正確性、操作のしやすさ、安全性、費用のバランスを踏まえて選びます。一つの観点だけで決めず、総合的に比較することが自分に合うツール選びにつながります。
試した結果を並べて整理するところまで任せられます。以下はAIに送るプロンプトです。コピペして使ってください。
複数のExcel向けAIツールを同じ題材で試した記録を渡します。選定の判断材料として整理してください。条件は4点です。(1)「正確性」「操作性」「安全性」「費用」の4観点で、ツールごとに記録から言えることだけを書く、(2)記録に書かれていない観点は「未確認」と書く、(3)最後に、どの観点を重視するとどのツールになるかを条件分岐の形で示す、(4)おすすめの1つを断定しないでください。
【以下、追加したい内容を記載してください】
※【 】の行は削除し、自分の情報に置き換えてから送信してください。
まとめ
Excel向けAIツールを選ぶ際は、困っている作業を整理したうえで、関数支援やデータ分析の機能を比較することが大切です。表・グラフ作成やOffice連携、ファイルの扱い、料金も含めて比較し、実際に試したうえで判断することで、自分の業務に合ったツールを選べます。
基準になるのは、Excelの中で使うMicrosoft 365 Copilot、外部のAIチャットであるChatGPTやClaude、追加費用のかからないExcel標準の[データの分析]の3つです。数式やVBAが目的なら後者2つから試し、毎月同じ集計を繰り返しているならExcelの中で使う型を検討します。
まずは関数作成・分析など、自分が困っている作業を特定するところから始めてみてください。 Excel業務全体の効率化は、AIでExcel業務を効率化する方法で解説しています。