生成AIに授業案や教材の作成を頼んでみたものの、期待していたものと違う内容が返ってきて、結局一から作り直した経験がある教員は少なくないでしょう。多くの場合、原因は生成AIの性能ではなく、指示文(プロンプト)の組み立て方にあります。
この記事では、教師向け生成AIプロンプトで最初に決めておくべき要素から、授業案・教材・評価文それぞれを作るプロンプトの組み立て方、出力条件を具体化する方法、生成AIの出力を事実確認する手順、プロンプトと出力を改善する手順、そして授業準備で避けるべき使い方までを整理していきます。狙った通りの出力を得るための、実践的な基本を確認していきましょう。
教師向け生成AIプロンプトで最初に決める要素
具体的なプロンプトを組み立てる前に、共通して押さえておくべき基本要素があります。
ここで紹介する指示文(プロンプト)の組み立て方は、特定の生成AIサービスに限定されない汎用的な考え方です。ただし、ChatGPT・Gemini・Copilotなど、生成AIサービスによって出力の形式や詳しさには違いがあるため、実際に使うサービスで試しながら調整してください。また、学校で利用できる生成AIサービスは自治体や学校の契約状況によって異なり、個人のアカウントで利用する場合と学校が契約したアカウントで利用する場合とでは、入力した情報の扱いが異なることがあります。この点もあわせて確認しておくと安心です。
プロンプトの作り方を教員間で共有し、基本操作や情報管理も含めて学ぶ場合は、教員向け生成AI研修の作り方で、校内研修の内容と進め方を確認できます。
作成するものの目的を示す
何を作りたいのかという目的を、プロンプトの冒頭で明確に示すことが基本です。「授業案を作ってほしい」「保護者向けの文章を作ってほしい」といった目的が曖昧なままだと、生成AIはどのような形式で出力すればよいか判断できず、意図とずれた内容になりやすくなります。
対象学年・教科・単元を示す
対象となる学年や教科、単元を具体的に伝えることも欠かせません。同じテーマであっても、学年によって求められる説明の深さや語彙のレベルは大きく異なります。この情報が抜けていると、対象に合わない内容が生成されてしまいます。
必要な形式と制約を示す
箇条書きで出力してほしいのか、表形式にしてほしいのか、あるいは文字数にどの程度の制約があるのかといった形式面の条件も、最初に伝えておくと手戻りを減らせます。形式の指定がないまま依頼すると、あとから何度も形式を直すやり取りが必要になりがちです。
授業案を作るプロンプトの組み立て方
授業案の下書きを作成する際に、押さえておきたい指示のポイントを見ていきます。
到達目標と授業時間を入力する
その授業でどのような力を身につけさせたいのかという到達目標と、確保できる授業時間を具体的に伝えます。目標と時間が明確であれば、生成AIはその範囲に収まる内容を組み立てやすくなり、実際の授業で使いやすい提案が返ってきやすくなります。
導入・活動・振り返りの流れを指定する
授業の基本的な流れである導入・活動・振り返りといった構成を指定しておくと、実際の授業運営に近い形の授業案を得やすくなります。構成を指定しない場合、内容の羅列にとどまり、時間配分や流れが分かりにくい出力になることがあります。
児童生徒の実態に合わせて調整する
クラスの学習状況や、特に配慮が必要な点があれば、それもプロンプトに含めておくとよいでしょう。ただし、個人が特定されるような詳細な情報は入力せず、あくまで一般的な傾向として伝えることが、個人情報保護の観点からも重要です。
ここまでの要素を組み合わせると、次のようなプロンプトになります。【 】の部分は、自分の授業に合わせて書き換えてください。
【学年】・【教科】の授業案を作成してください。単元は「【単元名】」で、到達目標は「【到達目標】」です。授業時間は【〇〇分】とし、導入・活動・振り返りの3つの流れで構成し、それぞれの時間配分も示してください。クラス全体としては【学習面で配慮したい一般的な傾向、例:計算に時間がかかりやすい】ため、活動の中でその点に配慮した工夫も加えてください。事実や制度に関わる内容は断定せず、教員が確認すべき点を明示してください。
教材を作るプロンプトの組み立て方
ワークシートや練習問題などの教材を作成する際の、プロンプトの組み立て方を紹介します。
教材の種類と使用場面を指定する
ワークシートなのか、確認テストなのか、家庭学習用のプリントなのかといった教材の種類と、どの場面で使うのかを具体的に伝えます。使用場面が明確であれば、その目的に合った分量や構成の教材を得やすくなります。
難易度と問題数を指定する
クラス全体の理解度や、想定する取り組み時間に応じて、難易度や問題数を具体的に指定します。「基礎レベルの問題を5問」「応用レベルを含めて8問」というように数値を含めて指示することで、狙った通りの分量に近づけやすくなります。
解答・解説の形式を指定する
解答だけを示してほしいのか、解説まで含めてほしいのかという形式も、あらかじめ指定しておくと手直しの手間を減らせます。解説を求める場合は、どの程度の詳しさで説明してほしいかも伝えておくと、より実用的な出力になります。
組み立てた要素をまとめると、次のようなプロンプトになります。
【教科】の【教材の種類、例:確認テスト】を作成してください。使用場面は【いつ・どのように使うか、例:単元のまとめとして授業内で20分使用】です。難易度は【基礎レベル/応用レベル等】とし、問題数は【〇問】にしてください。解答は【解答のみ/解説付き】とし、解説を含める場合は【どの程度の詳しさか、例:中学生でも理解できる平易な言葉で2〜3行】示してください。未確認の固有名詞や統計値は使わず、教員による確認が必要な箇所には「要確認」と付けてください。
評価文を作るプロンプトの組み立て方
通知表の所見など、評価に関わる文章を作成する際は、特に慎重な指示の組み立てが求められます。
評価対象と観点を指定する
誰を、どのような観点で評価する文章なのかを明確に伝えます。学習面なのか、生活面なのか、あるいは特定の活動における取り組みなのかによって、盛り込むべき内容は変わってきます。
根拠となる学習成果を入力する
評価文の元になる、具体的な学習成果や行動の記録をプロンプトに含めることが重要です。根拠となる情報を与えずに評価文の作成を依頼すると、実際の児童生徒の様子とかけ離れた、一般的な表現になりがちです。
断定を避けた表現条件を加える
評価文には、断定的すぎる表現を避け、成長の過程を示すような柔らかい言い回しを求める条件を加えておくとよいでしょう。「今後の期待を含めた表現にする」といった条件を指定することで、教育的な配慮のある文章に近づけやすくなります。
まとめると、次のようなプロンプトになります。評価文はあくまで下書きの作成を補助するものであり、最終的にどのような評価を下すかは教員自身が判断してください。
【評価対象、例:総合的な学習の時間での取り組み】について、【評価の観点、例:主体的に取り組む態度】の観点から評価文の下書きを作成してください。根拠となる学習成果は「【具体的な学習成果や行動の記録、例:グループ活動で調べたことを分かりやすくまとめ、発表に取り組んだ】」です。断定的な言い方は避け、今後の期待を含めた柔らかい表現にしてください。新しい事実を推測せず、最終的な評価判断と表現の確定は教員が行う前提で、下書きだけを提示するよう伝えることも有効です。
出力条件を具体化する方法
より狙った通りの出力を得るために、条件をどこまで具体化すればよいかを見ていきます。
文字数・表現・構成を指定する
「300字程度で」「である調で」「見出しを立てて」といった、文字数・表現・構成に関する具体的な条件を加えることで、修正の手間を減らせます。条件が抽象的なままだと、意図と異なる長さやトーンの文章が返ってくることがあります。
含める内容と除外する内容を指定する
必ず含めてほしい内容と、含めてほしくない内容の両方を伝えることも有効です。たとえば「専門用語は使わない」「固有名詞は使わない」といった除外条件を加えることで、より意図に近い出力を得やすくなります。
出力例を示して形式を揃える
過去に作成した授業案や教材の一部を例として示し、「このような形式で作ってほしい」と伝える方法も効果的です。文章のスタイルや構成の見本を与えることで、毎回の出力形式を揃えやすくなります。
出力例を示す場合は、個人情報や未公開情報を含まない見本を使うことが前提になります。内容そのものではなく、項目と順序だけを示す形にすると、個人情報を含めずに形式を揃えやすくなります。
たとえば、次のように過去の出力を示したうえで指示を加えると、形式がぶれにくくなります。
以下は過去に作成した【教材や授業案の名称】の出力例です。 【過去に生成AIが出力した文章を貼り付ける】 この例と同じ見出し構成・文体で、【今回作成したい内容】を作成してください。事実確認が必要な箇所には「要確認」と付けてください。
生成AIの出力を事実確認する手順
生成AIが作成した内容は、そのまま使う前に必ず確認する手順を踏む必要があります。
教科書・学習指導要領と照合する
生成AIが示した内容が、教科書の記述や学習指導要領の内容と一致しているかを確認します。生成AIは一般的な知識をもとに出力するため、教科書独自の表現や、学校で採用している指導方法とずれている場合があります。
数字・固有名詞・引用元を確認する
歴史上の年号や人物名、統計データといった数字や固有名詞は、誤りが含まれている可能性があるため、必ず信頼できる資料で確認する必要があります。この確認を怠ると、誤った情報を児童生徒に教えてしまう結果につながりかねません。
教員が授業で使える内容か判断する
内容が事実として正確であることに加えて、実際に自分のクラスの授業で使える内容になっているかを、教員自身の目で最終判断する必要があります。事実として正しくても、指導のねらいに合わない内容であれば、そのまま使うべきではありません。
プロンプトと出力を改善する手順
一度で満足のいく出力が得られない場合、どのように改善を重ねればよいかを整理します。
不足点と誤りを具体的に指示する
出力に不足している点や誤っている点があれば、「もっと詳しく」といった曖昧な指示ではなく、「導入部分に具体例を追加してほしい」というように、具体的に何を直してほしいのかを伝えることが効果的です。
条件を一つずつ追加して再生成する
一度に多くの条件を変更するのではなく、一つずつ条件を追加しながら再生成することで、どの条件がどのように結果に影響したのかを把握しやすくなります。この積み重ねが、次回以降のプロンプト作成の精度向上にもつながります。
たとえば、教材の解説が簡単すぎたと感じた場合、次のように条件を一つ加えて改善します。
改善前:
【基礎レベルの問題を5問】作成してください。
改善後:
【基礎レベルの問題を5問】作成してください。各問題には、【なぜその考え方になるのかが分かる解説を2〜3文で】添えてください。
このように指示文へ条件を一つ加えるだけで出力がどう変わるかを確認しながら、必要であれば次の条件を重ねていきます。授業案についても同様に、条件を一つずつ具体化していくことができます。
改善前:
中学2年生の数学の授業案を作成してください。
改善後:
中学2年生の数学「一次関数」について、50分授業として、導入10分・個人活動15分・ペア活動15分・振り返り10分の構成で授業案を作成してください。各段階で教員が確認すべきポイントを1つずつ加えてください。
最終版を教員自身で修正する
生成AIとのやり取りを重ねても、完全に理想通りの出力が得られるとは限りません。最終的には、教員自身の言葉や工夫を加えて仕上げるという姿勢を持つことが、実際に使える教材や文書に近づける近道になります。
授業準備で避けるべき使い方
生成AIを活用するうえで、明確に避けるべき使い方についても押さえておく必要があります。
個人情報や未公開情報を入力する
児童生徒の氏名や成績、家庭状況といった個人情報や、学校運営に関わる未公開の情報を、外部の生成AIサービスに入力することは避ける必要があります。入力した情報が意図せず外部へ流出するリスクを避けるため、こうした情報は含めずに利用することが基本です。
出力を確認せず授業で使う
生成AIが作成した内容を、内容の確認を行わないまま授業でそのまま使用することは避けるべき使い方です。前述の事実確認の手順を省略してしまうと、誤った情報を児童生徒に伝えてしまうリスクが高まります。
評価判断を生成AIだけに任せる
児童生徒への評価に関わる最終的な判断を、生成AIの出力だけに委ねることは避ける必要があります。評価文の下書き作成を補助的に活用することはできても、最終的にどのような評価を下すかは、教員自身の責任のもとで行うべき判断です。
ここで挙げた注意点は、記事独自の判断だけによるものではありません。文部科学省は「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(Ver.2.0、2024年12月26日改訂、2026年9月時点で公開されている内容)を示しており、教育現場での生成AI活用にあたっての考え方の確認先となります。あわせて、生成AIの利用ルールは自治体・学校設置者ごとに定められている場合が多いため、本記事の内容よりも所属する自治体・学校のルールを優先し、事前に確認しておくことが大切です。自治体によっては、教職員向けに独自のプロンプト集や利用の手引きを公開している例もあります。
プロンプト設計だけでなく、授業準備や校務全体で生成AIを安全に活用する流れを整理したい場合は、教師の生成AI活用ガイド|授業準備・校務で安全に使う方法も参考になります。
まとめ
教師が生成AIを授業準備に活用する際は、作成するものの目的・対象・形式を明確に伝えることが、狙った通りの出力を得るための基本になります。授業案・教材・評価文それぞれの特性に応じた指示を組み立て、出力を事実確認する手順を欠かさないことが重要です。
一度の出力で満足のいく結果が得られなくても、条件を一つずつ調整しながら改善を重ね、最終的には教員自身の言葉で仕上げるという姿勢を持つことが、生成AIを授業準備で効果的かつ安全に活用するための鍵になります。