特別支援教育でAIを使う個人情報対策|支援記録を安全に扱うルール
個別の指導計画や支援記録の作成にAIを活用すれば、文章化にかかる時間を大きく減らせます。しかし、支援記録には氏名や障害の状況など、特に慎重な扱いが求められる情報が含まれているため、便利さだけを優先して入力してしまうと、思わぬ形で個人情報が流出するリスクを抱えることになります。
この記事では、AIへ入力する個人情報のリスクから、入力してよい範囲の決め方、記録を匿名化する方法、障害情報を扱う際のルール、作成後の保存・共有ルール、校内でのルール統一、そして実際に扱う前の確認手順までを順番に整理します。読み終える頃には、支援記録をAIで扱う際に、校内で共有できる具体的なルールが見えている状態を目指します。
特別支援教育でAIへ入力する個人情報のリスク
まずは、支援記録をAIへ入力する際に、どのようなリスクが存在するのかを整理します。
支援記録に含まれる識別情報
支援記録には、氏名や生年月日、学年やクラスといった、本人を直接特定できる情報が含まれています。これらの情報をそのままAIへ入力すると、本人を特定できる形でデータが扱われることになるため、他の校務文章以上に慎重な取り扱いが求められます。
障害や特性に関する情報の慎重な扱い
診断名や特性に関する情報は、一般的な学習記録以上にセンシティブな性質を持つ情報です。こうした情報が意図せず外部へ流出した場合、本人や家庭に与える影響は大きく、通常の個人情報よりも一段高い慎重さで扱う必要があります。
入力後のデータ管理を確認する必要性
入力した情報がAIサービス側でどのように扱われるのか、学習データとして利用される可能性があるのかどうかを、あらかじめ確認しておく必要があります。サービスによって取り扱い方針は異なるため、利用前にデータ管理の方針を確認する工程を省略しないようにします。
AIへ入力してよい支援情報の範囲を決める
リスクを踏まえたうえで、AIに入力してよい情報の範囲をあらかじめ決めておきます。
AI利用の目的に必要な情報だけに絞る
支援記録の文章化を手伝ってもらうといった目的に対して、本当に必要な情報だけに絞って入力します。目的に直接関係しない情報まで含めてしまうと、それだけ個人情報が外部に渡るリスクが増えることになります。
氏名や連絡先を入力対象から外す
氏名や保護者の連絡先といった直接的な識別情報は、入力対象から外すことを基本にします。文章を生成した後で、必要な箇所に手作業で名前を補う運用にすることで、AIへの入力自体から識別情報を排除できます。
入力不要な具体的エピソードを削る
支援記録の文章化に必要な範囲を超えて、家庭の事情や個別の出来事を詳しく書き込むことは避けます。具体的すぎるエピソードは、それ自体が本人を特定する手がかりになることがあるため、必要な範囲にとどめます。
支援記録を匿名化する方法
入力する内容を、実際に匿名化する具体的な方法を確認します。
氏名を仮名や記号へ置き換える
実際の氏名の代わりに、「Aさん」のような仮名や記号を使って入力します。文章を生成した後、必要な箇所だけ実際の氏名に置き換える手順にすることで、AIへの入力段階では個人を特定できない形を保てます。
所属や日時など特定につながる情報をぼかす
学校名や具体的な日付、細かい所属情報も、そのまま入力すると特定につながる手がかりになることがあります。「ある学年」「ある時期」といった形にぼかすことで、識別性を下げられます。
複数情報の組み合わせによる特定を避ける
一つひとつの情報は匿名化されていても、複数の情報を組み合わせることで本人が特定できてしまう場合があります。入力する情報全体を見渡し、組み合わせによる特定のリスクがないかを確認します。
障害情報や特性情報を扱うときのルール
障害や特性に関する情報は、他の情報以上に丁寧な扱いが求められます。
診断名だけで支援内容を決めない
診断名を入力してAIに支援内容を提案させる場合も、診断名だけで機械的に支援内容を決めつけないようにします。診断名はあくまで背景情報の一つであり、実際の支援は本人の様子を踏まえて教師が判断する必要があります。
本人の尊厳を損なう表現を入力しない
特性や困難について記述する際、本人の尊厳を損なうような表現を使わないよう注意します。生成された文章についても、表現が適切かどうかを教師が必ず確認し、必要に応じて修正します。
必要以上に詳細な特性情報を含めない
支援記録の作成という目的に対して、必要以上に詳細な特性情報まで入力することは避けます。目的に照らして、本当に必要な情報だけを厳選する姿勢を、他の情報以上に徹底しておきたい部分です。
AIで作成した支援記録の保存と共有ルール
生成した支援記録を、どのように保存し、共有するかについてもルールを決めておきます。
生成結果に個人情報が残っていないか確認する
AIが生成した文章の中に、意図せず個人情報が含まれていないかを確認します。入力時に匿名化していても、生成された文章の中に推測できる情報が残っていないか、最終的な確認を怠らないようにします。
保存場所とアクセスできる人を決める
生成した支援記録をどこに保存し、誰がアクセスできるようにするのかをあらかじめ決めます。保存場所やアクセス権限が明確でないと、必要以上に多くの関係者が情報を閲覧できる状態になってしまうことがあります。
共有時に必要な範囲だけを渡す
支援記録を他の教職員や関係機関と共有する際も、その相手にとって必要な範囲の情報だけを渡すようにします。全体を一律に共有するのではなく、共有の必要性に応じて内容を調整する運用が望ましいと言えます。
校内で入力ルールを統一する方法
個人の判断に任せるのではなく、校内でルールを統一しておくことも重要です。
入力禁止情報を具体的に定める
氏名、生年月日、診断名の詳細など、入力してはいけない情報を具体的に定めて校内で共有します。抽象的な注意喚起だけでなく、具体的な項目としてリスト化しておくことで、教職員全体が同じ基準で判断しやすくなります。
利用できるAIツールと用途を決める
支援記録の作成にどのAIツールを使ってよいのか、どのような用途であれば利用可能なのかを校内で決めておきます。個人が自由に判断してツールを選ぶのではなく、学校として統一した基準を持つことが安全性につながります。
迷った場合の確認先を決める
入力してよいかどうか判断に迷った場合に、誰に確認すればよいのかをあらかじめ決めます。確認先が明確であれば、判断に迷った教職員が自己判断で進めてしまう事態を防ぎやすくなります。
支援記録をAIで扱う前の確認手順
最後に、実際に支援記録をAIで扱う前に確認しておきたい手順を整理します。
入力前に匿名化を確認する
AIへ入力する直前に、内容がきちんと匿名化されているかを確認する手順を設けます。この確認を毎回の習慣にしておくことで、うっかり実名を入力してしまうといったミスを防ぎやすくなります。
生成後に内容と個人情報を再確認する
生成された文章についても、内容が適切か、個人情報が残っていないかを再度確認します。入力段階だけでなく、生成された結果についても確認する工程を挟むことで、二重のチェックになります。
保存・共有前に校内ルールとの一致を確認する
保存や共有を行う前に、校内で定めたルールと実際の運用が一致しているかを確認します。ルールを決めただけで終わらせず、実際の運用の中で確認する習慣として定着させることが大切です。
特別支援教育でAIを使う際の支援別の活用方法や注意点を整理したい場合は、特別支援教育でのAI活用ガイド|支援別の実践方法と注意点も参考になります。
まとめ
特別支援教育でAIを使う際は、支援記録に含まれる氏名や障害情報が特に慎重な扱いを求められる情報であることを踏まえ、入力する範囲をあらかじめ絞り込むことが基本になります。氏名を仮名に置き換え、所属や日時をぼかすといった匿名化を行い、診断名だけで支援内容を決めつけない姿勢を持つことで、本人の尊厳を守りながら活用できます。生成後の内容確認や保存・共有時のルールも含めて校内で統一しておき、入力前・生成後・共有前という各段階で確認する手順を習慣化することで、安全に支援記録をAIで扱える環境を整えていきましょう。